マットガイドウォーター(湖)にある
フリースクールで先生をしている
私(ウタドリ先生)と、水辺のある森で暮らす小さな生きものヤービとの出逢いからはじまる
物語り。
とりわけ、この2巻目の「ヤービの深い秋」は
自然の描写が素晴らしい。
ページをめくるたびに
落ち葉を踏みしめながら森に入っていくようだ。
私は梨木香歩さんのネイチャーライティングエッセイ(水辺にて、渡りのあしあとetc...)が
とても好きだ。
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「野山を歩いていても思うのだが、より速度を落として歩いた方が、
世界の「厚み」を実感できる気がする。
、、、
そういうことは、急ぎ足では見落としがちになる。自転車でもだめだ。
いわんや車をや。
主体の移動速度が増せば増すほど、
その主体にとっての世界は
厚みを失う。
ときにその場に立ち止まり、
じっと五感をめぐらし、
そのめぐらした関係性の構造のようなものがグジャグジャにならないよう
ゆっくりした動きで
その場から歩を進める。
傍から見れば
くつろぎの極致のように
見えるだろうが、
実は内的な緊張度は高いのだ
、、、単にうれしくて気分が
昂揚しているだけかもしれないが。
〜水辺にて・文庫版あとがきより抜粋」
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ヤービの目に映る森や、
ウタドリ先生が感じる自然の神秘に、
筆者の自然に対する瑞々しい感性と
視点がそこかしこに
散りばめられていて、
毎晩本を開くたびに
ヤービと一緒に森の中に入っていく。
時に立ち止まり、
自然の中に身をおいて五感をめぐらすこと。
土の匂いや風のそよぎ、
虫たちの音。
様々な生き物の気配が、
発信され受信され、
互いに影響しあって流れてゆく。
ウタドリ先生が言う
〝秋の気持ちを知る〟
人間でいたいと思う。
◯福音館書店発刊